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「軍団」に憧れがある。
たけし軍団、石原軍団、竜兵会やボンゴレファミリーみたいな感じで、僕を慕って集まってきた人達と何かをしてみたい。
芸能界やフィクションの中だけでなく、自分の周りでも軍団みたいなことになっている人たちがいる。なんなら僕自身も偉い人に呼ばれて飲み会に参加した、みたいな経験があるし、既に軍団の一部になっていたりもしたのかもしれない。
そういえばその人からはほんの数回呼ばれたきり誘われなくなってしまった。ハマらなかったんだなあと思う。
高校の頃、誰の目にも明らかなほどの軍団を形成していた奴がいた。常に周りを仲間で固めていて、声や態度が大きくて、でも確かにカリスマ性があるタイプで、同級生かつ日陰者の立場としてはあんまりよく思えない、妬み嫉みのこもった眼差しを向けてしまいがちな人だった。そいつと一緒につるんでいた人達は正直見下していたところもあった。
でも今考えれば、素直にああいう人についていく人間関係も楽しかったんだろう。子飼いになるぐらいなら孤独を選ぶね……みたいなこと思っていたけど、ああいうタイプの人に引き上げてもらえば、もしかすると二つ三つ上のカーストで過ごすギャハギャハの高校生活があったのかもしれない。個人行動をしていては絶対に発生しないようなイベントがあったのかもしれない。
そういうのを回収するためにも、僕は軍団に入ったり軍団を率いたりしたいと思う。
実際に周りの軍団めいた人たちを見回した時、まず目につくものとして酒のつながりがある。軍団を率いている人は大抵酒に詳しかったり強かったりする。
そもそも今どき軍団に限らず大人が集まってやることなんて飲み会ぐらいしかないけども、やはり酒というのは人が集まる以上避けては通れない(酒だけに)要素となる。この事実は個人的にはかなり厳しいものがあって、僕は1杯で人に笑われるほどに顔が真っ赤になるほどアルコールに弱く、かといっておもしろい酔い方をするわけでもなく、葡萄のチューハイと間違えてファンタをおいしく飲むほど違いがわからない男だから、酒の席で主役になることは相当難しい。
そういえば森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』を読んだ時、あまりにも酒が強い奴が正義すぎる話で、理不尽な嫌悪感を覚えた。読んだのは結構前だけど、確か酒が強くなければ参加できないイベントがあったり、酒に弱い登場人物が酔い潰れて酷い目にあったりしていたような覚えがある。生まれ持った体質でこんなにも明暗分かれて、そんなことってないじゃないかと思った。
酒以外に軍団のトップが持っていそうなものとしては、器の大きさが浮かぶ。困っている人を助けたり後輩に何かを振る舞ったりすれば、その人の良さを慕って集まってくる人もいるだろう。卑屈で小さい人間が軍団を持っているという話は聞いたことがない。
自分にもなにか人の良さをアピールできるようなエピソードはなかったか。道路に落ちてる大事そうなものは大抵拾って然るべきところに届けてる話?スーパーに行ったら店の掲示物が強風で剥がれてたのを元に戻した話?インターンの選考直前に往来で声をかけてきた宗教勧誘の人のトークを全部聞いた話?なんだかどれもピンと来ない。もっと金払いがよかったりとんでもない面倒事を引き受けたりしておけばよかった。持っているエピソードが弱い。そして弱いくせにこうしてひけらかそうとしているあたり、器の大きいやつとは到底言えない。
器の大きさは武器にできないとなると、あとはセンスの良さしかない。
実際、僕がカッコいいなと思っている人は酒に強いわけでも器が特別大きいわけでもないけど、そのセンスと醸し出す雰囲気に惹かれるものがある。博識でクールでミステリアスで、掴みどころがない感じ。「この人、何にアツくなるんだ……?」みたいな印象を周りに与えられればカッコいい気がする。
そうしたことをそれとなくアピールできるものの一つがSNSのいいね欄だと思う。僕も憧れている人のいいね欄を見て「っぱカッコいいな~……」と思ったり、嫌いな奴のいいね欄を見て「っぱなんか『浅い』んだよな~」とケチをつけてたりする。いいね欄とはその人の感性に触れたものが折り重なってできるところであって、しかしそれが公開情報である以上、人に見られることを前提としたいいね欄作りをする必要があるだろう。部屋に来た人に本棚を見られるようなもんだから、『ゴーマニズム宣言』や渡辺麻友1st写真集『まゆゆ』みたいな俗っぽい本(=ツイート)を背表紙が見えるようにアーカイブしといちゃいけないんだろう。
今この話をしていたら、中1の頃の部活を決める時期に見学に行った部活の先輩に「『ゴーマニズム宣言』を読め!」みたいな話をされたのを思い出した。一貫校だったのでたぶん先輩は高1か高2だったと思うんだけど、小学校卒業したての子供に出す話題じゃないだろうと、今振り返って思う。
ともかく、何万いいねもされてるようなものはスルーして、まだ世に出てないけどおもしろい人や、変わった趣味があることを仄めかすいいねをしておく。他人の目に見える範囲の自分のセンスをいい感じに保っておけば、僕が実際そういう人に憧れているのと同じように、僕を慕ってくる人も出てくるのではないか。ゆくゆくは「この人がいいねするんだからセンスがいいってことなんだろう」的な、インフルエンサー側に回れたらさらにいい。
もう全部言っちゃったので無粋なことこの上ないものの、今年の残りはぜひともセンスを武器に軍団を集めていきたいと思う。
君も僕の軍団に入って、一緒に炊き出しとかしよう。