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童貞かそうでないかのラインが突き詰めていくと「はじめての異性との性行為のエピソード」を持っているか否かに行き着くとの考えからそういったエピソードを考えていた時期がある。

 

 

 

あれは大学1年の12月のこと(知り合いの童貞だった人間はこのぐらいの時期に初めての性行為をしていたので。リアルを引用することはこの上ないリアリティだろう)。

他サー(ここが重要。どのコミュニティで話したとしても「所詮よそのコミュニティにおける僕の話」であることが絶妙などうでもよさを生む)のなんでもない飲み会が終わり、終電で帰ることになった。山手線の外回りで帰るのは僕含め5人ほどで、みんな中々に出来上がっていたが特にある女の先輩(この架空の女の先輩と架空の性行為をすることになる)の酔いがひどくて、ご機嫌な様子で男の先輩にしなだれかかっている始末だった。


池袋乗り換えの人たちが降り、女の先輩と僕だけが山手線に残る。空いた席に先輩を座らせ、特に絡んだこともないので酔うとこんな人なんだなと思いつつしばらく乗っていると、先輩は急に「気持ち悪い、吐きそう」と言いだす。

僕は酔って吐きそうな人の扱いをよく知らない。とりあえず電車で吐くのはまずそう(吐いてる人を見たことはある)なので、連れて降りた方がよかろうと思い、西日暮里(初稿では上野で降りたことになっていたが自分の帰宅経路からすると不自然なので改稿した)で先輩を連れて降りた。この時点で僕はその日帰宅することを諦めることになる。


とりあえずコンビニで水を買って袋をもらい、先輩に渡す。吐きそうなのに吐けないという状況が一番キツいのは想像がつくので、しばらくコンビニの前で先輩を眺めていた(ここで背中をさすったりする描写がないのが僕らしいところで、これから性行為をする僕の話なのに、僕は女に触れるのを避けている)。

12月の寒空の下、終電を逃して、吐きそうな女の人を連れて外で夜を明かすのが無謀であることはなんとなくわかっていた。とにかく屋内をと思いカラオケ店やファミレスを検索していたところ、ちょうど近くのビルにネカフェがあったのでそこを先輩に提案する。そんなに動ける状況にない先輩も賛成したので早速向かう。


そっから、その、、なんか、部屋?的なやつが2人用の部屋に通されたんで、なんか、そういう雰囲気になって、あの〜〜、エッチしちゃいました、、、照

 

 

 

みたいな話を、割と真剣に考えていた。

フィクションであるにもかかわらず、自分の生活の中であり得るであろう性行為は、酩酊状態の女性と性的同意も曖昧なままに行われるものぐらいだと思っているんだな。自分の生き方では自然な流れからどうやってもドラマチックで説得力のある性行為に行き着かないので、とりあえず個室に2人をぶち込むだけになってしまう。


ただ、この久保ミツロウからエンタメ成分を抽出しきった出がらしみたいなエピソードでも「こういうことが自分にあった」体で生活すると、爛れた性生活の経験(があったであろう様子)から生まれる深みのある雰囲気…「窪田正孝マインド」が自分の中に降りてきて、なかなか余裕が生まれる(ような気がする)。これはいけなくて、僕は危うく童貞を見下す童貞になるところだったので、この手のエピソードを捨てることにしたんだった。